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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第3主日

《A年》
 73 神よあなたの顔の光を
【解説】
 詩編27は、二つの部分からできています。前半(1-6節)は、神へのゆるぎない信頼と神とともに住む願いが語ら
れます。後半(7-14節)では、困難な状況のなかから、神に救いを願っています。このように、詩の構成が、多くの
詩編と反対であり、作り方も異なるところから、もともとは別の詩だったものをあわせたと考える学者も多くいます。と
は言うものの、神の家で、ありのままに神を仰ぎ見るという、感情的な深さにおいては、すべての詩編でもっとも感動
的と言えるでしょう。13節の表現(詩編唱の6節の前半)は、神の国で「神をありのままに見て、終わりなくたたえる」
(第三奉献文)ことを述べていることから、教会は、この詩編を死者のための典礼、葬儀ミサなどで用いています。
 答唱句は、詩編唱と同じように、各小節最後の四分音符以外は、すべて八分音符で歌ってゆきます。旋律は第三
音のEs(ミ♭)から始まり、主音に降り、神が穏やかにその顔の光を照らしてくださる様子が表されています。旋律も
その他の声部も動きが少なく、特にバスは他で歌われているすべての詩編に共通する、神への信頼を表すように、
主音に留まります。
 詩編唱も基本的にドミナントから段階的に下降しますが、各小節とも終止音は持続音より2度上昇しており、この反
復が詩編唱に緊張感と安らぎを与えています。4小節目の終止の部分は、答唱句の終止の部分と同様に終わって
います。
【祈りの注意】
 答唱句の最初は、mp で始め、1小節目の終わりで、いったん rit. と dim. しますが、2小節目の冒頭で元に戻
し、最後は、さらに rit. と dim. を豊かにして終わります。特に、最後の答唱句は、最初からp あるいは、pp で始
め、早さも、一段とゆっくりします。とはいえ、祈りのこころ・精神は、一段と深く、強くしなければなりません。
 解説でも書いたように、答唱句は各小節の最後の四分音符以外、すべて八分音符で歌ってゆきます。楽譜を入れ
ることができませんので、ことばだけで書きますが、「ー」は八分音符一拍分延ばすところを、太字は自由リズムの
「1」にあたる拍節を、*は八分休符を、赤字は音が変わった最初の音を、それぞれ表しています。
 かみよあなたのかおのひかりをー*|わたしたちのうえにてらしてくださーぃ
 となります。
 よく聞く歌い方で気になるのは

  1小節目=かみよーあなたのかおのひかりをー 
  2小節目=わたしたちのうえにーてらしてくださいー

というように「かみよー 」と「うえにー」さらに「さいー」を延ばすものです。「かみよ」の「よ」の後で間があく場合もあり
ます。しかし、延ばしたり、間をあけるのでのであれば、楽譜にきちんとこのように書いてあるはずです(たとえば367
「賛美の賛歌」参照)。「かみよー」ではなく「かみよ」、「うえにー」ではなく「うえに」となっていますから、この「よ」と
「に」は、八分音符で歌い、すぐに、「あなたの」と「てらして」に続けなければなりません。特に、「うえに」は、その後
の「あなた」の「あ」と字間があいているので、あけるしるしと勘違いされることがありますが、ここで、字間があいてい
るのは、楽譜を作る上での技術的な限界から来るもので、決して延ばしたり、間をあけたりするしるしではありませ
ん。実際に、歌い比べてみると、延ばさないほうがはるかに深い祈りとなるはずです。
 2小節目の最後の「ください」も「くださいー」としてしまうと、品がない歌い方になります。「くださーぃ」と、「さ」を延ば
し「い」を最後に添えるようにすると、品位ある祈りになります。
 今日のことばの典礼のキーワードは一言「光」と言えるでしょう。第一朗読では、主の降誕の夜半のミサでも読まれ
た、イザヤの預言です。福音朗読は、この、イザヤの預言の成就としてのイエスの転居が述べられます。イエスが述
べ伝えている「神の国は近づいた」ということばは、ヘブライ語の表現としては、時間的なことにも空間的なことにも、
当てはまります。つまり、イエスの活動によって、神の国は、時間的にも空間的にも、わたしたちのところに「近づい
た」のです。それゆえに、イエス・キリストを通して、わたしたちは、「神の美しさを仰ぎ見て、神の家を住まいとする」こ
とができるのです。しかも、それは、今も、キリストがわたしたちとともにおられるのですから、今日の詩編の祈りを、
すなわち、神の国の完成を、わたしたちは、この世で前もって味わうことができるのです。この深い喜びを、詩編を味
わいながら深めてゆきたいものです。
 この答唱詩編は、答唱句・詩編唱ともに、非常に繊細なものです。祈るわたしたちも、日本語の繊細さを生かしなが
ら、細やかなこころで祈りを深めてゆきましょう。
【オルガン】
 いつも、この形式の答唱詩編の前奏で注意していることですが、前奏のときも、実際に歌う長さで、音を出すことを
忘れないようにしてください。答唱句のことばや福音朗読の内容を考えると、明るめながら、控えめな音色がよいと思
われます。強い音量や派手な音色は避けたい答唱句です。フルート系の8’、会衆の人数によっては、4’を加えても
よいでしょうが、最後の答唱句は8’だけで、しっとりと味わえるようにすると祈りも深まるのではないでしょうか。

《B年》
 137 すべての人の救いを
【解説】
 詩編25は、詩編34と同じく、ヘブライ語のアルファベットの第6文字(ワウ)が省略されたアルファベット詩編です。
ただし、現代の底本では、他に、第2文字(ベート)と第19文字(コーフ)も欠けています。「道」ということばが何度も
繰り返され、神の道を歩み続けることができるようにと、罪の許しを求める祈りがささげられます。
 答唱句はアルトとバスが第2小節までC(ド)、和音も主和音を保つことで、すべての人の救いを願う精神の持続を
表現しています。後半は一転して、和音も動き、特に「(待)ち望む」で、旋律は最高音のC(ド)に至り、テノールでは
As(ラ♭)が経過的に用いられ、救いを待ち望むこころと決意が神に向かって高められます。
 詩編唱は、六の和音から始まり、救いを待ち望む姿勢が継続されます。第3~第4小節にかけては、伴奏のテノー
ルでFis(ファ♯)を用いて和音が属和音に至り、和音進行でも祈りでも、答唱句へと続くようになっています。
【祈りの注意】
 答唱句はあまり早くならないように注意しましょう。答唱句のこの、ことばをゆっくりと噛み締めるように祈りたいもの
です。人間、誰でも一人や二人は好きになれない人がいることでしょう。その人たちのことをぜひ思い起こし、その人
たちの救いを願い、この答唱を祈りたいものです。「すべてのひとの」と「救いをねがい」の後の八分休符の前の「の」
「い」は、そっとつけるように歌い、やや dim. すると、ことばが生きて、祈りも深まります。
 後半の「わたしは」からは、だんだん大きくしながら rit. しますが、決して、乱暴に怒鳴らないようにしましょう。「待
ち望む」で、この cresc. は最高点に達しますが、「望む」からは、徐々に、 dim. すると祈りも深まるのではないでし
ょうか。答唱句全体がP で歌われますから、この cresc. も P の中で cresc. すると、自然と祈りが深まるでしょう。
 詩編は、答唱詩編の最初のページで扱った原則を思い起こしてください。詩編唱の1節で「神よ」という呼びかけが
ありますが、ここで、区切りを入れると、音楽ばかりか祈りも途切れてしまいます。この詩編唱は、どの小節も一息で
祈りましょう。「神よ」や「神は」の後、半角あいているのは読みやすくするため、途中で字間があいているのは楽譜
の制作上の限界であることは、すでに述べています。
 1節の最後の「くださぃ」は、「さ」をのばし「ぃ」をそっとつけるように、天におられる神に呼びかけるようにします。決
して「さいー」と品が悪い歌い方、祈り方にならないようにしてください。最後に歌う答唱句は、この答唱詩編の締めく
くりとして、テンポも少しおとし、PP で歌うと、より、この答唱句の祈りのことばが深まるでしょう。
  第一朗読では、ヨナによるニネベの町への回心の呼びかけが読まれます。詩編唱の、特に、2節は、この呼びか
けをもたらされた神の み心が語られています。このあとヨナは、この、神のいつくしみに腹を立ててしまいます。ガリラ
ヤ湖畔で召しだされた弟子たちも、自分たちが一番と思いこみ、しばしば、他の人々に嫉妬したり、弟子たちの間で
さえ、仲間割れが起こります。わたしたちも、ついつい、神のいつくしみの深さをなかなか受け入れられないことがあ
るかもしれません。わたしたちの方からではなく、神の、また、キリストの方からわたしたちを召しだしてくださった、い
つくしみと恵みの深さ・豊かさを思い起こしながら、この詩編を味わいたいものです。
【オルガン】
 答唱句の祈りのことば、音楽性からも、やはり、おだやかなフルート系のストップが求められます。まず、8’+4’で
はじめましょう。最後の答唱句は、8’だけにすると祈りも深まります。主鍵盤の8’だけで弱いようなら、Swell の8’を
コッペルする方法をとります。最後だけコッペルをかけるのが難しそうなら、最初からかけておいてもよいでしょう。人
数の少ないミサなら、最初からコッペルして、最後は主鍵盤だけにして弾くこともできますし、あるいは、最後は、詩
編唱の続きのまま、Swell で弾いて、Swell Box で音の強さを調整してもよいかもしれません。Swell Box で音の強さ
を調整することは、主鍵盤で弾いているときにも応用できます。

《C年》
 124 主よあなたは永遠のことば
【解説】
 詩編19は、前半と後半ではその性格が全く異なります。前半は、天空、特に太陽の動きを通して、神の栄光をた
たえています(147「天は神の栄光を語り」で歌われる)。それに対して、後半では、教え・さとし(トーラー=律法)を
与えてくださった神に栄光を帰しています。この、後半部分は詩編119(125で歌われる)と似ています。そして、最
後は、その教えを守ることができるようにとの祈りで結ばれています。
 答唱句は、非常に複雑な和音で進んでゆきます。冒頭は、2♭の長音階、B-Dur(変ロ長調)の主和音で始まりま
すが、これは、最初のアルシスだけです。最後は、バスからC(ド)-G(ソ)-Es(ミ♭)-C(ド)の和音で終わること
から、教会旋法の第一旋法に近いと言えるでしょう。前半はバスが音階進行で動き、とりわけ「永遠の」では、バスと
アルトで臨時記号が使われた半音階の進行で、こころを「永遠」に向けさせます。後半では、バスが第三小節でG
(ソ)、第四小節でC(ド)を持続し、旋律は、最高音のC(ド)となり、この信仰告白の体言止のことばを力強く終わら
せます。
 詩編唱は、ドミナント(属音)のGを中心にして動きます。
 なお、この詩編19を歌う124の場合は、詩編唱の1小節目と3小節目の、最後の四分音符と八分休符(オルガン
では付点四分音符)および小節線を省き、1小節目の全音符から2小節目の全音符、3小節目の全音符から4小節
目の全音符へと、それぞれ続けて歌います。1小節目と3小節目にある最後のことばも、すべて、八分音符で歌いま
す。詩編の1節を例に挙げると、以下のようになります。赤の太字は、音が変わるところです。

かみのおしえはかんぜんでたましいをいきかえらせー*|
 そのさとしはかわらずこころにちえをもたらすー*
【祈りの注意】
 答唱句のことばは、《ガリラヤの危機》の後のペトロの信仰告白のことば(ヨハネ6:68)です。最初の「主よ」の後
の八分休符は、次の「あ」のアルシスを生かすものです。「よ」が惰性で伸びないようにし、オルガンの伴奏が一足早
く変わるのを味わえると、「あ」のアルシスがより生きると思います。ペトロの信仰告白のことば「あなたは永遠のいの
ちのことばを持っておられます」の次には、「あなたこそ神の聖者であると、わたしたちは信じ、また知っています」と
あります。この、答唱句のことばも、ただ単に「ラビの一人として」「ユダヤの賢者として」ということではなく、神の聖者
としてあなたこそ永遠のいのちのことばをもっておられる、という意味合いになるのではないでしょか。「あなたは~」
のところを、メトロノームで、はかったように歌うと、ことばを棒読みしているように聞こえます。四声の場合は、アルト
は特にレガートをこころがけましょう。一連の八分音符を、やや早めの気持ちで歌うと、「あなたこそ」という確信に迫
る祈りになるのではないでしょうか。「ことば」の部分、特に、アルトの動きは、最後の rit. を促すものです。オルガン
伴奏だけのときも、この音の動きをよく味わい、オルガニストは、祈りを込めて弾きたいものです。この答唱句を歌うと
き、ペトロと同じように、キリストに従う決意を新たにしたいものです。
 第一朗読では、バビロン捕囚から帰還した民が、エルサレムで律法の朗読を聞いて、うれしさのあまり、涙した様
子が朗読されます。朗読箇所の最後のことば、「主を喜び祝うことこそ、あなたたちの力の源である」(ネヘミヤ8:1
0)というネヘミヤとエズラの励ましは、わたしたちにとっても全く同じではないでしょうか。残念ながら、わたしたちは、
この人々のように、神のことばを聞いて、感涙(かんるい)に浸るということがなかなかありません。ともすれば、ミサ
の聖書朗読も聞き流してしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、本来、神のことば=キリストは永遠のいの
ちのことばです。その意味では、わたしたちには神のことばへの飢え渇きがもっと必要なのかもしれません。今日の
詩編のことばを、毎日の教訓、戒めとしてしっかり心に刻み付けておきたいものです。
【オルガン】
 前奏でも、「あなたは」のところをメトロノームで、はかったようにではなく、ことばを生かすように弾くことが大切で
す。ここのところは、旋律は同じ音が続き、アルトは音階で進行するので、特にレガートに、気を使ってください。
 詩編のことばを豊かに味わい、黙想しますから、できるだけ、深みのある伴奏を心がけましょう。ストップ構成は、基
本的に、フルート系の8’+4’あるいは、Swell の8’をコッペル(カプラー)でおろしてつなげてもよいでしょう。。ペダ
ルの16’は、あまり、強いものは用いないほうがよいと思います。前奏のとき、上の、テンポの注意を同じように、ここ
ろがけてください。音階と半音で動くアルトを、祈りにふさわしくレガートで弾くことも、祈りを支えるために重要です。






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